カラクリ屋敷の座布団の下

主にポケモンに関する記事を書いていきます。レート報告、育成論、ポケモンGO、本編、その他雑記や考察など。

『天気の子』を見た感想・考察

急に大衆向け記事みたいなタイトルでブログを更新してどうした、という方もいらっしゃるかもしれませんが、自由気ままに書かせて頂きますね。

というのも私はアニメ映画が好きでして、有名所の宮崎駿細田守新海誠の作品は特に多く見ています。考察や感想を比べ合うのも含めて面白いですよね。

今回は普段のゲームは置いといて新海誠監督の最新作「天気の子」について語ります。

 

※ネタバレ有り。見ていない方は注意!!

※小説・パンフレットは未購入です。

 

 

 

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映画『天気の子』スペシャル予報

 

 

まずはストーリーについて。

話は難しくないのですが、何点かハッキリしない部分も存在しました。全てを100%明確に描写しないのは前作「君の名は。」でもありました。入れ替わりが代々発生していた理由は隕石回避の為では、と憶測でしか語られていなかったり。

今作では、力を消耗して消えたヒロインの陽菜が雲の上(彼岸)に強制送還されたのに対して、空から東京に戻る際は主人公の助けが来たとはいえ戻ろうとして本当に戻ってきています。

クライマックスを盛り上げるご都合主義と言ってしまえばそれまでですが、どうして人柱として死んだとも言い換えられる者が任意で戻ってこれたのかが謎です。ちょっと引っかかって感動を削がれたのはありますね。

ラノベの設定みたい、と言った事が大体そのまま巫女の設定なのは自虐?

 

主人公の帆高も家出に並々ならぬ決意をしているのが伝わってきましたが、理由を聞けば本当にただの家出でしかありませんでした。何か物語の根幹に関わる理由が……と考えてしまうのは綺麗に締めた君の名は。の後だからかもしれませんが、物語の発端が薄かった気もします。

 

起承転結がしっかり分けられているのは君の名は。から受け継いだ良い点ですね。多少の疑問はまあいいか、と思わせてくれる盛り上がりで大きな問題にはなりませんでした。

「秒速五センチメートル」の時によく言われた、背景が主役ってのはもう言えないですよね。今でも確かに背景の美しさは主役級ではありますが。

 

 

 

 

次にキャラクター。

 

 

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バイトルに登録する直前の様子

 

帆高は先述の発端としての薄さもありましたが、主人公として不満はありませんでした。犯罪祭りは監督が事前に言っていた「賛否分かれる」ことの一つでしょうが、君の名は。があまりに優等生な構成だったので同じ方向には向かないようにしたのでしょう。

優等生というのは主人公達による社会違反件数というだけではないのです。ストーリーがほぼ全て綺麗にまとまり、全世代を漏れ無く感動させる「君の名は。」と比べるとグレているんです。

前作に比べて劣等生という訳ではありません。賛否分かれるとは前作ありきの発言なのだと思います。

帆高は一貫して現代の子供のようです。「最近の子は何でもネットに書いちゃうんだろ」のセリフの後にYahoo!知恵袋で相談していますからね。時に頭がおかしくなっちまったんじゃないかという無謀な逃走をしたり、最後の選択も子供だからできたと言えます。

 
 

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恋するフォーチュンクッキーを踊れる

 

陽菜は秘密を持った正統派ヒロインという感じ。不思議な女の子がアツい心を持った主人公が導いていくのは古来からの王道です。

母親は天気の巫女だったのでしょうか。病院では雨が降っており、首飾りは娘の陽菜に渡る。能力までもが娘の手に渡った時、おそらく母親は事切れたのでしょう。

公園では「帆高って子供」「私は早く大人になりたい」と語っています。年齢詐称の伏線でもありましたが、自分がまだ子供という自覚を持ち、無力を感じているんですね。晴れにする能力はあるのですがやはり“ただの空模様”でしかないのです。

子供は大人になりたくて、大人は子供に戻りたい。ポケモンのED曲「ポケットにファンタジー」を思い出します。

 

 

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テッシーの愛読書ムーに辛辣

 

須賀は大人になり切れない大人として描かれていました。夏美が「若い頃は帆高と似ている」と言っていた通り、おそらく帆高の気持ちが一番理解できるキャラクターです。娘の養育権で揉めているのも親(大人)としてはダメですよね。

ですが大人になり切れてなくても大人。本人もわかっているでしょう。最後に大人として帆高に立ち塞がる壁にもなります。これは建前なんです。自分が一番理解できる帆高が警察に取り囲まれると道を開いてくれる味方になります。

何も知らない大人がコイツの邪魔をすんな!

一番コイツを理解してる俺が本音を抑えて止めようとしてるんだよ!

と心の中で叫んでいた事でしょう。

 

 

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加齢臭やだ隣に座らないでくださ〜い

 

夏美は就職が上手く行ってないようでしたが、前作のラストでも瀧がお祈りされ続けていました。新海監督は面接に嫌な思い出でもあるのでしょうかw

したいように行動した末のカーチェイスでも白バイ隊員とか言ってはいましたが、その後に関しては今の仕事を続けていくであろう事が最もわかりやすかったと思います。取材中の明るさ、都市伝説に対する興味が描かれていたので想像に難くありません。

言の葉の庭」といい、新海監督は未成年と成年女性の関係性が絶対好きですよねw

 

 

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ラノベの設定ならぬラノベの主人公

 

凪は万能な弟。ラブホでしか夜を明かさなかった所でも、彼がいる事で全くエロシーンには見えなくしてくれています。彼がいなければ若い男女2人ですから結構な毒の強いシーンになってしまいますよ。

侍らせている女児は佐倉さんと花澤さんだったんですね。EDクレジットでやっとわかりました。さてはアニオタじゃねーな?

 

警察は一言目でわかる平泉成で草を生やしました。

もう一人の高井は声優が梶さんだったんですね。声が低くて全く気付きませんでした。さてはアニオタじゃねーな?

 

前作キャラはわかりやすい瀧と三葉の他に、ワンシーンだけテッシー&さやちん夫婦がフリマの辺りで出てきました。前作に続くサプライズですね。これによって問題も出てくるのですが、それは後で。

瀧の祖母は前作でいう所の三葉の祖母のポジションでした。彼岸の説明を老人がするというのがポイントです。

四葉もいたらしいのですが見つけられず。

ソフトバンクのお父さんもCMのシーンしか見つけられず。

アメという名の猫。久しぶりの猫ですね。

 

言の葉の庭」では雨が一人のキャラクターというように監督が語っていましたが、今作ではそう描かれてはいない気がします。

ちなみに声優は全員上手くて驚きました。君の名は。の時もそうでしたが、声優経験の浅い方でも演技を仕事としている人を起用することによって、いわゆる棒演技を回避しているのだと思います。

 

 

 

音楽については今回もRADが担当。

個人的にRADは好きではあるとあらかじめ断っておきますが、それでも二回連続で担当する事に対しては否定的でした。これ以降の作品で新海監督が他のアーティストを使いたいと思った時に躊躇が生まれてしまうんじゃないかと思うのです。

実績があるので何とも言い難いんですよね。

 

 

 

そして作品として。

「天気の子」を製作するにあたって、最大の敵でありライバルが存在しますね。その作品のおかげで天下の新海誠になれたのではありますが。

そうです、当然ながら君の名は。です。

 

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チャンピオンの きみのなは がしょうぶをしかけてきた!▼(絶望)

 

これは避けられないイベントバトルですよ。おそらく監督自身も想像もしなかったレベルの売り上げを記録してしまい、注目度も今作は段違いになってしまっていました。これを倒さなくてはアニメーターとして続いていかない図式なのは誰の目からも明らか。

この強大な敵を攻略するにはどうしたらいいか、非常に悩んだ事でしょう。

 

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君の縄。「結局僕が一番強くて凄いんだよね」

 

 

答えは、

正攻法では勝てないから搦め手で勝つ

だったようです。

 

千と千尋に次ぐ第2位です。普通に抜くのは無理というもの。賛否分かれる展開にしなければ別の方向からの視聴者への攻撃にならなかったのです。

一部の作品を取り上げてセカイ系作家だとか言われていた新海監督ですが、今作はわかりやすく少数の人間が多くの人々の命運を握っています。

最後の選択について書かない訳には参りませんね。

 

 

 

物語の結末について。

天候か一人の少女かを天秤にかけられ、帆高は陽菜を選びます。結果、異常気象は終わらず東京は沿岸部が水没。綺麗に全てをまとめた「君の名は。」のように大団円とはいかせませんでした。

 

帆高は雨が降り続いていたおかげで陽菜と出会い、稼ぎ、生活できていました。これだけ悪天候が続くのは異常(狂ってる)のですが、それで生きていけているのだから序盤でも帆高はゲリラ豪雨を喜んでいます。結果論ですが、世界は人柱がいようがいまいが雨が降り続いている事に変わりはありませんでした。

 

異常は次第に受け入れられて正常になっていきます。慣れというのは怖いものです。地下鉄がなくなり、電車が船になっている描写までありました。それだけ人は変化に対する耐性=適応力があり、誰も原因を知らないからこそではありますが帆高を責める者はいません。

真実を知る須賀は「世界を変えてしまったとか思い上がるな」と言います。瀧の祖母は「元に戻っただけ」と埋め立て前の東京の話をします。

須賀は「世界なんて最初から狂ってるんだから」とも。最初から人柱なんてシステムがあるこの世界が狂ってるんだという慰めの言葉でもあるようです。

 

帆高はこれらを否定した上で「世界を決定的に変えてしまったんだ」と言います。天候は物語開始から狂っていてクライマックスが終わっても狂ったままになりました。変えたと言えばそれは“陽菜のいる世界に変えてしまった”ということ。

帆高にとって彼女は太陽でした。家出して先の見えなかった彼の先を照らしてくれたのが陽菜でした。晴れ女というのはそういったニュアンスでもあったように思います。

自分にとってはすぐ側に太陽があるから、天気が狂っていようと「大丈夫!」なんですね。

 

全体より個を優先して、その張本人が何も考えない子供のような選択をして「大丈夫!」じゃないだろ〜と思ってしまってスッキリ帰れなかった大人な観客もいたでしょう。

しかし沈んだ東京に適応して人々は生きていくでしょうし、それを選んだ主人公にも太陽がいる。限りなく大団円には近いのです。

 

人は社会に適応して自然と精神的な大人になっていきます。大人の須賀が最終的に警察を妨害して帆高を行かせたのは、今は異常な行動をしている帆高もいつかは放っといても大人になるからです。途中で言った「大人になれよ、少年」は他人が言う事ではなかったということがわかったんですね。何故なら須賀自身がそうであった、そうして大人になったから。

須賀は公務執行妨害で捕まっていましたし、そんな事をすれば養育権は諦めるしかないでしょう。以前から指摘されていた自分の非を認めざるを得なくなり娘を手放すのは必然だった。受け入れて須賀も少しだけ大人になったはずです。

 

 

 

 

最後に、次回作の問題点。

ゲストキャラとして前作の声優やキャラが出てファンサービスとなりましたが、これには問題も付きまといます。

君の名は。」と繋がった物語だとした場合、次回作は東京が沈んだ世界設定の話になってしまうのです。これは架空の糸守町に隕石が落ちて廃村したなんてどころの話じゃなくなります。単なるファンサービスというのなら問題ありませんし、「君の名は。」で「言の葉の庭」の先生が糸守にいるのだから杞憂かもしれませんが……。

 

 

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今作は実は2021年の物語。時間の入り混じる「君の名は。」ですが、クライマックスの瀧三葉の再会は2022年なのだそう。つまり二人が再会する前の東京です。再会した時には水没済みとなるので、やはりパラレルワールドであって連続した物語ではない……?

 

 

 

いかがでしたでしょうか。

こういった個人の思った事をそのまま吐き出す内容は書くのも見るのも好きなんです。

おそらく天気の子は君の名は。よりは売れないでしょうし監督もわかっているでしょう。自分のスッキリしなかった部分も考えると100点満点という評価にもならないはずです。

ですが映画として面白かったのも事実。逃避行でラブホの機能を退職金で満喫しまくるシーンが一番好きでしたね。最後の晩餐でもありましたが。

 

あの大作の後で3年で新作が完成するとも思っていなかったので、その挑戦の早さも嬉しかったです。監督、またまだ描きたいことが溢れているんだなと思わせてくれました。